神々と生き物 Des Dieux et des Êtres

 

人生にはいつも驚かされる。

次の瞬間は、何が起きるか、どんな人に出会えるか、どんな風が吹くかわからないもんです。

1998年の8月の最後の土曜日、目がさめたとたん、理由もなく「今日、鎌倉へ行こう!」 と決めた。その一言が私の人生を変えた。

20年ぶり、鎌倉に行って来ました。昔はよく、由比ヶ浜、稲村ヶ崎、長谷へ遊びに行ったにもかかわらず、小町に行ったことのなかった私、初めてこの町を歩 いた。私に合うお店があまりなかった。「あんがい面白い店がない」と思い初めたところ、突然、ある店のショーウインドーに目が行った。

今思うと、『目が行った』よりも『目を引かれた』と言ったほうが正しい。そこに、小さなお地蔵さんが私を見ていた。何も考えずに、店に入った。

「すみません、あそこにあるお地蔵さんを連れて帰りたいです。」
「......」店のオーナーの目が「この外人は何を言ってるでしょう?」と訝ってた。
「あの、お地蔵さんを連れて帰りたいんです。」
「あぁ、お買いになるんですか?」
「はぁ、連れて帰りたいです。」

その日、他のところにもよらずに、そのわらじ地蔵を連れて家に帰った。着いたら、すぐ古い茶タンスの上に置いて、ものすごく喜びました。「そうか!そのために鎌倉に行ったのか。あなたに会うためだったか!私を呼んでたでしょう。

「初めまして。よろしく。」 だが、何となく、お地蔵さんがちょっぴり寂しがってると感じた。
次の日、またまた2時間近くかけて、鎌倉に行った。同じ店に入った。
「いらっしゃい。昨日、ありがとうございました。」
「いいえ。もう一人のお地蔵さんをを連れて帰りたいんです。昨日の方は何となく一人で寂しいみたいなので...」
「はぁ!.... 」
「この方が家に行きたいみたい。連れて帰ります。」
「はぁ?.... 」 「やっぱり、外人って変な人ばかり」と店の人の目が言ってた。
お礼を残して、店から出るところで、思いついた。
「あのう、このお地蔵さんを作ってる方に注文が出来るんでしょうか?」
「.... どういったことでしょう?」
「あのう、六地蔵を作ってもらいたいです。」
「..... はぁ... どうでしょう。」
「時間がかかってもかまいませんので作ってもらいたいです。」
「少々お待ち下さい、先生に電話をしてみます」と言って、十分近く、先生と相談しながら、時たま、私のほうを見ていた。「やっぱり、変な人!」と目が訴えてた。
「お客さん!先生がお作りになるんですが、半年から1年かかるかもしれません。 よろしいでしょうか?」
「はぁ、是非。いくら時間がかかっても構いませんので。よろしくお願いします。」
「はい、大丈夫だそうです。よろしくお願いします、先生」と店の方は言って、受話器を下ろした。

家に戻り、新しいお地蔵さんを置いて、ものすごく喜んだ。昨日来てくれた方も確かに、喜んでいた。その日の午後、少し考えた上で、先生に直接に電話をする ことにしました。本来、手紙を出して、挨拶と「お願いします」との一言を書くべきでしたが、私は手書きが苦手なもので、思い切って電話した。

15分後、先生の家に招待されてた。

その日以来、先生の所へ行くたびにお邪魔をして。その日以来、先生の作品を集め始めた。自由が丘、広尾、小田原、飛騨高山、新潟、湯布院まで行って、色々な作品を連れて戻った。

そして、何よりも、色々な素晴らしい方に出会うことになりました。

「今日、鎌倉に行こう」と言ったその日が元の始まり。その日から私が歩く道が変わりました。海、山、空の散歩、スキーを後にして、お地蔵さんと共に暮らし始めた。そして別の意味で世界が広がるようになりました。

あの8月の鎌倉で出会った小林先生のお地蔵さんのお陰で。

人生には思わぬことがあります。

 


 

 

小林牧牛先生のお地蔵さんと言えば「わらじ地蔵」。

先生が作っている人形は、お地蔵さん、羅漢さん、道祖神、雷神・風神、大黒、恵比寿、七福神の他、人間様、動物(十二支)、そして様々な妖怪(鬼、河童、座敷童)も作っています。

その中で、わらじ地蔵が彼の作品の代名詞と言えるでしょう。

ここで紹介される小林牧牛先生の125体以上の作品はすべて個人のコレクションです。プライベートコレクションとしては世界一と思われます。一つ一つにコメントやエピソードを添えて紹介したいと思います。

よかったら、「むかし、むかし」で始まり、「だったとさぁ」で終わるような世界に入ってみて下さい